過去、サイコウに恐ろしい思い出

■雷
ぼくがヨットと出逢ったその夏の、ある日の事。
いつものクルージングの帰り、神戸の沖合いを西宮に向かう帰路の途中でした。
曇り空、雨がパラパラと降る中、それは突然、ものすごい勢いの雨に変わりました。
バケツをひっくり返したような大粒の雨、それに雷!
重く黒い雨雲から、一筋の雷が海面に向かってまっすぐ突き刺さる。
これが、すぐ僕たちの船のほんのすぐそばに落ちてくるのです。
ある時は目の前に、ある時は背後に、それも、数えきれないほど何度も、何度も。

そら恐ろしい!!
怖いのなんのって!!

鳴りやまぬ雷鳴の中、僕たちはただただ祈るようにその間を走るしかありませんでした。
体は恐怖で縮み上がり、降り続く雨でぷよぷよにふやけ、夏なのに寒さで震える。
自然の力の大きさと恐ろしさを、五感に深く擦り込まれた体験でした。

※ちなみに、その辺りは神戸沖。
「大きな船もいくつかあるから、多分僕たちの船のような低い船には落ちないだろう、順番から言うと大きな船からだろう」とか、「船には避雷針というものが付いているので、大丈夫だろう」など、そのような理由を安心感のよりどころにしていたと思います。
落雷のシステムについて色々な事が判ってきた現代に於いては、この考えの半分は気休めだったなと思うばかりですが。

とにかくこれが、後にも先にも、僕の海上での雷の経験の中で最高に恐ろしかった思い出です。
こんな雷には、それから先も遭った事はありませんでした。
無事帰ってみると、神戸では大変な被害がでているとのニュースが。
昭和42年、近隣の山からの土石流が三宮の商店街にまで流れてきた、神戸大水害の日の事でした。
あちこちの川が増水、氾濫し、多大な被害をもたらしたと、今でも語り草になっている災害でした。

その夜はクタクタに疲れ果て、ぐっすり眠りました。

若き日の Mr. JIB – ヨットと出合った頃

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