東北・ソロツーリング〈後編〉

■3日目 <11月6日(金)> 盛岡~靑森経由~仙台 走行約520km
朝7時30分に起床、盛岡を8時30分にスタート。
今日の一番目の目的地は、青森県の奥入瀬渓流。
昨日、盛岡で知り合った方にここは是非行ってみて下さいと、強く薦められた場所です。
現地に着いたならばバイクを止め、少し歩いてみてくださいと。

素晴らしい景色に思いを馳せながら、東北道をひたすら青森方面へ。
東北道に入ってまもなく、左手に富士山を小さくしたような雪が積もった岩手山を見つけました。

Mr. JIB みちのく独り旅 – 岩手山

しばらく走った後『北緯40度』の看板を越え、八戸自動車道へと進みました。
ここまで来るともう山が深い。大きい。
全てが青々とした山にすっぽり包まれているのです。
ああだから靑森なのか、と、自分なりに納得。

Mr. JIB みちのく独り旅 – 愛車 BMW 1200GS Adventure

さあそして、ようやく目的地の青森県の県境を越え、10時頃八戸インターに到着。
景色を見ても何だか実感らしきものは無いのだけど、普段は全く見る事もない「靑森」という漢字の看板が、今、あちこちに在る。ああ、靑森に居るんだなと感じさせてくれるのです。

いよいよ本州最北の場所へ来たのだという実感も去ることながら。
そこから地道で奥入瀬(おいらせ)渓谷へと向かいます。
ちなみに、ここは、ここだけ時計がゆっくり流れているような町でした。
ひたすら、ゆっくりなんです。
ドライバーは制限速度以下で走り、抜くこともせずゆっくりと。
皆、急ぐ人など誰も居ない(本当は居るんでしょうけど!)感じ。
不思議な時の流れに身を任せていると、自分もなんだかゆったりしてきます。

Mr. JIB みちのく独り旅 – 12時前に奥入瀬渓流に到着。

そこで僕を待っていたのは、本当に、教えてくれた人の言葉通り、感慨深い素晴らしい風景でした。澄み渡る空気と澄み切った清流が、延々と続くのです。
地面とほぼ同じ高さの渓谷は、自然のありようそのままを感じさせてくれ、ちょっと関西では出逢う事の出来ない景色です。
残念な事に紅葉はもうすっかり終わってしまっていましたが、その景色の素晴らしさはとても言葉でも伝えきれません。
ここは、自然界の生き物たちの休息の場所なんだなという感じがします。
十和田湖から注ぎ込む渓流の水の透明度は、同じ透明でも質が違うように見えます。
僕たちが知ってる自然の山々は、どれだけ山深くても人の気配というのがどこかしこかにするものですが、ここは、観光客もたくさん見かけたのですが、それでも人間の気配が少ない。
ゴミなんかも当然、全くない。

ここは本当に、みんなに見せてあげたいと思った場所です。

バイクを止め、少しその渓谷沿いに歩いてみました。

ここまで西宮から約1250km。ずいぶん遠くまで、あっという間に来てしまいました。
この場所へ来られただけで、この旅はもう充分、達成し満足だと思いました。
ちなみにこの地では、僕たちの知っている『動物注意』の看板は全て『熊注意』です。
至るところに、この看板が登場します。あんまり歩いていたくはないですね(笑)。

昼過ぎに、最終目的地であり、旅の折り返し地点の十和田湖到着。奥入瀬渓谷があまりにも素晴らしく、まだ余韻に浸っていたせいか、有名な十和田湖が何だか普通の湖にしか見えません。
ここで、現地の方と少しお喋り。
昔はもっとヒメマスが捕れたとか、おたくは何処から来たのだとか、ここでもまたやわらかな東北弁が心地よく耳に響きます。

Mr. JIB みちのく独り旅 – 十和田湖

余談ですが、現地の方に聞いた話しでは、東北弁はどうしてあんな喋り方になるか、という理由があるそうです。
冬になると外気が冷たいから、口をなるべく閉じた状態で喋れるように喋ると、あの喋り方になるのだそうです。へ~なるほどですね!

そんな会話を楽しんだ後、再び十和田湖を秋田側へ回り東北道へ戻りました。
ここからは、はるか南を目指す遠い旅の始まりです。

さてふと考えると、ここまで走ってきて、東北地方でまだ一度も走ってない県が一つ残っていました。
それが山形県でした。
『全ての都道府県の地面を一度は踏む』という、大切な目標達成の為に、ここは是非ともやり遂げねばなりません。
そこで、知人も居て以前から興味深い街であった仙台を、この日の宿泊地に選びました。
仙台ならば、山形までは目と鼻の先です。
全ての都道府県を踏む偉業達成は、明日の楽しみとして、一路仙台へ。

午後5時頃、仙台の街へ到着。

仙台は都会だ、と聞いてはいましたが、聞いていた以上にとても都会!
この旅で訪れたどんな地方都市よりも秀でて、とても洗練された印象を受けました。
現地の知人数人に連絡を取り、夜には彼らと落ち合いました。
牛タン料理、バー巡り、そしてここでも外せない寿司屋でシメ。
よく食べ笑い、やっとホテルに戻ったのは午前4時前くらい。
やれやれ、よく遊んでしまった。
これは明日ちゃんと起きられるかどうか、ちょっと心配になってきました。

■4日目 <11月7日(土)> 仙台~山形経由~西宮 走行約1000km
朝10時に起床、すぐさま仙台をスタート。

夕べの楽しい余韻にひたる間もなく、次なる目標達成の為に出発。
東北自動車道から山形自動車道へと、約40kmのショートトリップ。
あっという間に山形ICに到着。
もう本当に「デン」って付いただけ(笑)
それでもいいんです、大目標達成!!
これでやっと気が済んだ僕は、一路目的地を西宮に。
帰りはウロウロせず、ひたすらまっすぐ帰るだけ。
どこまで走れるかわからないけれど、疲れたらそこで一泊する事を念頭に置き、出来る限り走りきろうと決めました。

11時、山形をスタート。
さぁ走るぞ!

僕の旅にずっと付き合ってくれたビッグバイク、BMW GS1200RS Adventureは本当に快適そのもの。
走る事に何のストレスもなく、ただただ快適に僕を走らせてくれました。

そのおかげで、京都近くで渋滞に遭いつつも、夜10時頃、西宮に到着!
何も言わずに帰ってきたので、DOG HOUSE営業中で残っていたスタッフの驚く顔を楽しみながら、ひとまず旅の無事を乾杯。

本日の走行距離は1000kmを少し越えましたが、まだ充分に体力は残っていました。
つくづく、僕ってタフやなって。

Mr.JIB みちのく独り旅 – ルート

■東北は、あったかだった。
齢60歳にして今回、本当に生まれて初めてその地を踏みました。
そして、改めて感じた事があります。
それは、東北の人々がとても暖かだったこと。
少なくとも僕はそのように強く印象に残りました。
思うに、自然環境が厳しい土地の人々は、五感が研ぎ澄まされているからではないでしょうか。
寒ければスイッチ一つで暖房、熱ければエアコン、快適な家や車、安全な街、そんなものに囲まれて生きているわれわれ都会人が、失してしまった本能に近いところにある「五感」が、とても敏感なのではないかと思います。
だから、人をいたわり思いやる心も深く細やかなのだろうかと。
素晴らしい土地のみなさん、短い触れあいでしたが大変お世話になり、癒されました。
ありがとう!

■旅の終わりに
僕がこの長距離の旅でつくづく感じた(思い出した)事は、旅の時間が大変だったものほど、充実感が大きいということ。
これはもうずいぶん若い頃から、ヨットで何度も体験していること。
今の時代は海外でも飛行機であっという間に何処でも行けるけれど、わざわざヨットで何週間もかけて行く。そのプロセスの中に在る時間こそ、宝なんですね。
心の中にどんどんあったかい熱い想いがこみあげてくる、この充実感です!

人生だって同じですね。
何時間もかかってやっと辿り着いた靑森の山に立ち、同じような思いを体験出来ました。
限られた休暇や色々な制限の中、時間のかかる旅が出来る人は、そうそう誰でもというわけにはいかないかもしれません。
でも、ぜひ一度はみなさんも、このような「時間のかかる旅」の醍醐味を味わってほしいと思います。

次の旅は鹿児島県、指宿の予定です。
今度は、日本列島の南を目指す旅です。
砂蒸し風呂でも入って、またいろんなおもしろいこと考えよう。
次回の旅の話しもお楽しみに。

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